「先輩……あの……」


お礼を言わなくちゃ。
先輩が私のために先生達にも協力を求めてくれたから、踏ん張れる。


「移動しようか。雨、降りそうだし」


空は黒く厚い雲が広がっている。


「莉子はホントに雨を呼ぶなぁ」

「違うよ。私じゃない……もん」


反論する私をクスッと笑った先輩は、屋根のある特別教室棟の渡り廊下に私を誘った。


「セーフ。降ってきたぞ」


空に手を掲げた彼は、「ほら」と私の手を握って同じように腕をあげさせる。


「俺……莉子の頑張る姿見て、決めたんだ」


突然だった。
それまで空を見つめていた先輩は、私に視線を移した。


「なに、を?」

「実は、進路に悩んでた。だけど……医学部目指すよ」

「そうなの!?」