そんなことに心を砕いている暇があるなら、理解してくれる人と楽しい時間を積み重ねた方がずっといい。
嫌な経験をしたけれど、心の中は不思議と清々しかった。
私には、大切な仲間がいると実感したから。
それにしても……音楽室の後ろに掲げてある音楽家の肖像画も、もはや誰だか判別がつかない。
「なんか、みんな変な髪形よね」
私の視線に気が付いた芽衣がそう漏らすと、千春がケラケラ笑う。
「このワイルドな天パっポイのがベートーベンで、パンチパーマですが長すぎますってのがバッハ」
千春の言うことがおもしろすぎて、思わず吹き出す。
「千春、偉大な音楽家に失礼だって」
「いいの、いいの」
千春は笑う私をうれしそうに見つめていた。
ベートーベンもバッハも、きっともう見分けられる。