「なに言ってんだ。クラスメイトじゃん。
それより歌だよ! 俺、音痴なんだよ……」
今までまったく接点のなかった彼に、こんなに助けられるなんて予想すらしていなかった。
それに……当たり前のように手を貸してくれる松下君の姿に、目頭が熱くなる。
『みんな仲良くなんてきれいごとは言わない。
莉子ちゃんが傷つくなら、そんな人からは逃げればいい』
『逃げるのは全然恥ずかしいことじゃない。
莉子ちゃんの正当な権利なの。
わざわざ不幸になりにいく必要なんてないんだよ』
そう夏未先生は言っていた。
だけど、逃げるなんて……とやっぱり躊躇していた。
でも、今ならわかる。
理解してくれない人に、わざわざ自分から近づく必要なんてない。