井上先生が皆に語りかけると、もう一度深々とお辞儀をして席に着いた。
夏未先生が言っていた『カミングアウト』がやっと実践できた。
元々学校に行くなら、クラスメイトには知っておいてもらおうと夏未先生と話していた。
それをポロッと哲哉先輩に漏らしたのだけど、それがまさかこんなことになっているとは思わなかった。
「莉子、良かったね」
「うん。ありがと」
後ろの席の芽衣が、私に微笑んだ。
学校が怖くてたまらなかったけど……今まで見えていなかった絆を知ることができた。
他教科の先生も、大きな名札をつけてきてくれた。
先生が忘れていると「先生つけて」と頼んでくれるクラスメイトがいたくらいだ。
勉強どころではなかった。
泣きそうなのをこらえるのに必死で。