「長瀬、まだまだ足りないかもしれないが、困ることは全部言えよ。
できることはするからな」


井上先生は私に語りかける。


「ありがとうございます。皆も……ありがとう」


立ちあがって深く頭を下げると、「気にするなー」と声をかけてくれた人もいた。

誰かわからなくたって、温かい気持ちはつながり合える。


「私……皆の顔がわからなくなっちゃいました。
街で会っても無視しちゃうかもしれません」


そこまで言うと、大粒の涙がポタリと床に落ちた。


「長瀬、わかってるから大丈夫」


大きな声でそう返してくれたのは、"松下"と書かれたカードを首から下げている。
学級委員の松下君だ。


「ということだから、皆も協力してくれ。
せっかくクラスメイトになったんだからな」

「オッケー」