哲哉先輩が、頼んでくれたの?
「皆……」
こうして教室に足を踏み入れることが、どんなに怖かったか。
千春と芽衣が一緒でなければ、逃げ帰っていたとさえ思う。
だけど……クラスの皆が私のことを理解しようとしてくれていることに、目頭が熱くなる。
一言も会話を交わしたことがないような男子までも、なのだから。
「ありがとう。本当に……ありがとう」
我慢できなくなった涙を隠すためにうつむくと、「莉子。席に着こうね」と芽衣が私を促した。
自分の席から教室を見渡しても、やっぱりひとりとしてわかる人はいない。
だけど、どんどん登校してくるクラスメイトが「長瀬さん来た!」と喜んでくれたり、私を見つけるとカードホルダーを取りだし、首からかけてくれて、胸がいっぱいだ。