「よかったよー。莉子がまたこうして来てくれて」


涙目の芽衣は、私に飛びついた。


「ふたりのおかげだよ」


両脇をふたりに挟まれる様にして昇降口に向かった私は、ふと思い出したことがある。

和代先輩はいたのだろうか。
いつもこうして登校してくると、彼女は必ず大きな木の下で響ちゃんを待っていた。


いつもの癖で、木の下を見たけど、誰もいなかった。

もう行ったのかな……と思ったけれど、哲哉先輩は体力の落ちている私を気遣って、早めに迎えに来てくれた。
だけど、思っていたより元気に歩けたから、いつもより早い。

そんな私より、朝の弱い響ちゃんが早く登校するなんて、あり得ない。


不思議に思いながらも、自分のことで精一杯だった私は、千春と芽衣に守られながら教室に向かった。