「莉子。平松君、待たせないで」
母の声が上ずっている。
私の復帰を喜んでくれているのだ。
「行ってきます」
結局トーストを一口かじっただけの私は、久しぶりの制服に緊張しながら家を出た。
「先輩、わざわざありがとう」
電車通学の先輩は、駅から我が家に寄るのは、遠回りになる。
「いいんだよ。そんなこと気にしない。
久しぶりの莉子の制服、やっぱりいいな」
清和の夏服は、白いブラウスに紺を基調とするタータンチェックのリボン。
そして、同じ柄のプリーツスカート。
胸とスカートの腰のあたりに入っている小さな校章の刺繍が、アクセントになっている。
「恥ずかしいよ」
入院中、毎日来てくれたおかげで、私達の距離はグーンと近づいた。