その日は梅雨らしく、朝から雨がしとしと降っていた。
「ちょっと、ちょっと!」
昼休みになると、芽衣が興奮した様子で私と千春のところに駆け寄ってきた。
「どうしたの? イケメンでも見つけた?」
ほんの冗談のつもりだった。
だけど……。
「そうなのよ! 二年の平松先輩が……」
平松先輩は一年女子の間では有名人だ。
なんせ、勉強もできて運動神経も抜群で……見た目だって、いつかスカウトされるんじゃ?と噂されるほど整っている。
「落ち着きなさいよ。平松先輩がどうしたのよ?」
冷静沈着な千春は呆れ顔だ。
「あぁぁぁ、あのさ……」
芽衣はテンパりながら、教室の後ろのドアを指差した。
「あっ……」
「莉子を呼んでる」
芽衣の指の先には、あの平松先輩がいるのだ。