「そう、ですね」

「莉子ちゃん、声や持ち物で誰かを判断するの、すごく上手くなってきたしね」


最近は、母はすぐにわかるようになったし、千春と芽衣も話し方でどっちか区別がつくようになった。


夏未先生が、『失った機能をカバーするための機能は、ドンドン研ぎ澄まされてくるから』と言っていたけど、注意深く観察する目が、発達してきたのかもしれない。


「不安なのは、わかってる」


先生は椅子に座るとそうつぶやいた。

私の気持ちを一番理解してくれているのはきっと夏未先生だ。


「もちろん、外来のカウンセリングは続けるし、退院したからって放り出すことはしない」


先生の言うことに嘘はないだろう。
今までだって、ずっと私に寄り添ってくれた。