「どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ」


芽衣の顔が固いのが気になったけど、千春が私にそう言った。


「哲哉先輩、だよね」

「おぉ、そう。
こんな時間にアイス食べても看護師さんに叱られないのかって、ふたりに聞いてたんだ」


そう、なの? 
それならここで聞けばいいのに。


「叱られないよねー。
夏未先生が好きな物食べていいよって言ってたし」


千春はそう笑ったけれど、芽衣はチラッと哲哉先輩の顔を見た。


「さてと、彼氏との時間を邪魔しちゃいけないわね。そろそろ退散するわ」


千春は食べかけのアイスを持って芽衣を促す。


「いいよ。食べていきなよ」


そんなこと、先輩だって気にしないだろう。


「ううん。ふたりを見てると、私も彼氏欲しくなっちゃうから」


やっと口を開いた芽衣は、優しく微笑んだ。