「はい」

「入るぞ」


いつものように白いエナメルバックを持っているのは、哲哉先輩だろう。

いつも二十時前に顔を出すのに三十分ほど早かったからか、ふたりと鉢合わせしたのだ。


すぐに名乗るはずの先輩がなにも言わない。
そして、千春と芽衣を見つめて一瞬目を見開いた。

ふたりがいつも来てくれているのは話してあったし、鉢合わせが初めてだとはいえ、驚くことではないんだけど……。


「こんばんは」

「ごめん、ちょっと」


千春と芽衣が先輩に挨拶をすると、哲哉先輩はなぜだかふたりを呼んで、病室の外に出た。

どうしたんだろう……。
アイスが溶けちゃうのに。


どれくらい経っただろう。
アイスの表面が溶け始めたころ、三人一緒に戻ってきた。