突然歯切れが悪くなった先輩を不思議に思いながらも、退院を具体的に考え始めている自分に気が付いた。
いつまでも病院を隠れ蓑にはできない。
だけど、怖い。
「莉子」
「ん?」
「退院しても、俺がついてるから、な」
険しい顔をしていたのかもしれない。
先輩の優しい気持ちが胸にしみた。
「そうだ。俺、スマホ変えたんだ。
水没させちゃってさ、今度は防水にした」
先輩は私のスマホに手を伸ばすと、「入れとくな」と言って自分の番号を登録し始める。
病院ということもあって、先輩に電話やメールをすることはなかったけれど、番号を知っているというだけで安心できた。
次の日、千春と芽衣が、アイスクリームの差し入れを持って、珍しく遅くに来てくれた。
ふたりと一緒にアイスのふたを開けて食べ始めると、ドアがノックされる。