私よりずっと優秀な先輩は、遅れている私の勉強を少しずつ教えてくれた。
「惜しいな。ここは……」
先輩は数学が得意なようだ。
「最近、調子がいいみたいだな。顔色もいい」
先輩が足しげく通ってきてくれるようになってから、気持ちが上向いてきた。
もちろん、千春と芽衣の励ましもあるし、父や母の影響も、夏未先生のフォローも、全部私の前向きな気持ちを作ってくれてはいた。
だけど、やっぱり一番大きな存在は、哲哉先輩だ。
「うん。先輩のおかげ。
退院したら……お菓子作ってお礼しますね」
「おぉ、それは楽しみ」
「先輩って、ドライフルーツ、ダメでしたよね」
私が尋ねると、先輩はなぜか驚いた顔をした。
「先輩?」
「う、うん。そうそう、ドライフルーツが……」