そうは言っても……不自由なことに変わりない。


「莉子ちゃん。あきらめよう」


夏未先生が意外な言葉を口にした。


「あきらめる?」

「そう。これからもドラマや映画を理解するのは、なかなか難しいと思う。
一瞬で誰かを見分けることだって無理。
できるようになりたいと悩んだって、医学が進歩しない限り、どうにもならない」


先生は微笑んでいるけど、、その内容はとてもシビアだ。


「皆、あきらめるなって言うけど……そんなの無責任だよね。
努力でどうしようもないことを、もっと努力しろって言われてるみたいで」


一度止まっていた涙が、再びポロポロとこぼれはじめた。


そうだ。
今は誰も私に"努力が足りない"とは言わない。

だけど、社会生活に戻ったら、目に見えない病気を抱えていても、簡単には理解してもらえないだろう。
そう考えると、どうにかしなくちゃと焦るのだ。