「先生……私、やっぱりダメだよ」


頑張らなきゃという気力すら湧いてこない。

私には、先生が笑っているのか怒っているのか区別がつく。
先生の言った通り、きれいな物もわかるし、さっきテレビに出ていた俳優がかっこいいとも思った。

だけど、それだけなのだ。

かっこいいと思うのに、もう一度見ても同じ人なのかわからない。

もしかしたらまた、かっこいいと思うのかもしれない。
だけど、別の人として、だ。


それって……もし自分に子供ができても、毎日毎日かわいい子と思うだけで、自分の子かどうかすらわからないということだ。

それで愛着なんて、湧くの?


「テレビ、わからなかったんだね。
場面転換多いから、莉子ちゃんにはハードルが高いかも」


布団に潜ったままの私に話しかける先生は、椅子に座ったようだ。