顔が識別できない病気なのだ。

テレビに映る人が誰かわからないのは、考えれば当たり前のことだ。
だけど、“まさか”だった。


「もう、ヤダ!」


手にしていたリモコンを床に投げつける。

ガシャンと電池のふたが外れて電池が転がったのが見えたけど、それどころではない。


「んん……」


唇を強く噛みしめると、ほんのり鉄の味がする。

夏未先生が『診断を受けるって必ずしも辛いことばかりではない』と言っていたけど、辛いことしかないじゃない!

だって、布団に潜って声を殺して泣くことしかできないんだよ?


「莉子ちゃん、夏未……」


しばらくすると、夏未先生がやって来た。
先生は帰る前に必ず顔を出してくれる。


「莉子ちゃん、あなた……」