「なに、これ……」
同じドラマのはずなのに、今の私には一変して見える。
主役だったはずの女優が、どの人なのかわからないのだ。
話の内容からやっとこの人だとわかっても、場面転換するたびに、また会話からその人を探さなければならない。
それに、大ファンだった俳優も、まったくわからない。
あれほど芽衣や千春と「かっこいい!」と盛り上がっていたのに。
これでは、物語に没頭することなんて、とてもできない。
「どうして……」
フェイスブラインドがこういうことだって、改めて突きつけられた気がする。
父や母がわからないのだから、俳優がわからなくて当然だ。
だけど、テレビですら楽しめないことに気が付いた私は、唖然とした。