「だからさ、ずっと言ってるじゃん。他の人に目を向けなよ。
他にも優しくてかっこいい人、たくさんいるよ?」
それまで黙っていた千春が、突拍子もないことを言いだした。
「他の人って……ねぇ」
他の人と言われても、響ちゃんしか目に入らない私は、誰も思いつかない。
「まあ、焦ることもないけど、チャンスが来たら乗っかるのよ。
莉子は響先輩しか知らないだけで、他にも優しい人、いっぱいいるんだから」
「う、うん……」
押しの強い千春は、隣のクラスの男の子と付き合い始めたばかりだ。
「それじゃ、私も彼氏候補、探そ。
莉子に先越されたらショックだもん」
「ちょっと、それって失礼!」
「あはは」
芽衣は茶化して言うけれど、私のことを心配してくれているのだろう。