確かに私も、自分がこんなことになるまで、フェイスブラインドなんて聞いたこともなかった。
「だけど……診断が付くと皆ホッとして帰っていくわ。自分の努力不足じゃなかったんだって。
この症状は、うつなどの二次的な疾患も多いの」
診断されてホッとするなんて、どれだけ大変な思いをしたのだろう。
「だから、診断を受けるって必ずしも辛いことばかりではないと思うよ。
それにね、顔はわからなくたって、絶対に変わらないものだってあるの。
親子の愛情とか、ね」
そうか……。
顔が判別できなくなったって、父は父だし、母は母だ。
「人ってね、頑張る人の周りには、手伝ってくれる人が集まるようにできていると、私は思う」
「だからって頑張りすぎることはないけどね」と先生は付け足した。