「ごめん、あれでよかったかな」


父と母が戸惑いながらも病室を出ていくと、夏未先生が申し訳なさそうにつぶやく。


「……はい。ありがとう、ございます」


ホッと気が緩んだのか、涙が溢れて止まらなくなる。


「辛いわよね」


返事すらままならない。
私の一生は、決まってしまった。


「泣きなさい」


夏未先生は、励ましたりしなかった。

ひとしきり泣いた後、興奮を抑えるために使われた薬のせいで、私は眠ってしまったようだ。
ハッと目を覚ますと、もう暗くなっている。


私はそっとベッドを抜け出してトイレに向かい、そして……鏡を覗き込んだ。


「あなた、誰?」


鏡に映る自分の顔すら、自分だと認識できない。

高校生になって、ほんのり淡いリップをつけて喜んでいた自分の顔が、この顔と同じなのか、わからない。