「そうだ、な。クヨクヨしてても仕方ない。頑張ろう、な」


父は明らかに目が泳いでいて、動揺を隠しきれていない。


私は不用意に泣いてしまわない様に、手を強く握りしめ、小さく頷いてみせる。
心配かけたくないから。

でも……。

お願い、帰って。
今は……泣きたいの。


「お父さん、お母さん。
莉子ちゃんと少しカウンセリングをしたいので、席を外していただけますか?

そうですね。おふたりともお疲れでしょうし、莉子ちゃんは責任を持って私がお預かりしますから、また明日、お越しください。
ご両親がお倒れになったら、莉子ちゃんが悲しみますよ」



脳外科の先生が説明を終えて出ていくと、夏未先生は父と母にそう提案した。

その言葉は柔らかかったけど、断れないような言い方だった。