【おやつね。建前は!】
その下にはさまれていたメモに、そう書かれている。
夏未先生だ。
夏未先生のように、患者の気持ちに寄り添えるお医者さんって、理想だな。
ふとそんなことを考えたけど……私には患者の見分けがつかないのだから、看護師なんてやっぱり無理なのだろう。
朝食と回診が終わってしまうと、母がやって来た。
「莉子、お母さん」
母だって辛いだろう。毎日毎日名乗らないといけないのだ。
「さっき整形の先生がね、足の骨折は、完治にはもう少し時間がかかりそうだけど、順調に回復しているって。
それと、脳外科の検査も入れていきますって言ってたわよ。もしかしたら、ね」
『もしかしたら』って……フェイスブラインドではないという結果が出るのかも、ということ?
母の言葉に一瞬浮足立つ。