「響ちゃんのことはもういいから。
それより、数学の宿題できた?」
「あー、あれわかんなくて、莉子の写そうと思って」
数学が苦手な千春は、バツの悪そうな顔をする。
「やってみてないでしょー」
「ありゃ、バレた」
三人でいるととても楽しくて、清和(せいわ)高校に入れてよかったと心から思っていた。
ただひとつ、響ちゃんとの複雑な関係を、のぞけば……。
「長瀬、次の英文を読め」
「は、はい……えっと……」
窓側の席から体育をやっていた響ちゃんの姿を盗み見ていた私は、突然の指名にしどろもどろになる。
「三十八ページの二行目」
小声で後ろの席の芽衣が教えてくれて、なんとか危機を脱した。