大変な病気を告知されたことで、心がトゲトゲになっているのだと思う。
すべての感情が、怒りとなってしまった。
父と母が帰ってしまうと、ホッと気が抜けて再び涙が溢れた。
泣かせてよ。
誰か、私の悲しみを受け止めてよ!
響、ちゃん……。
思えば、響ちゃんにだけは怒りを露わにできた。
だけど、彼はもう来ないだろう。
皆が協力を申し出てくれているというのに、ひとりぼっちになってしまった気がした。
「失礼します。夏未です」
消灯の少し前、夏未先生がやって来た。
「先生、まだお仕事?」
「うん。もう帰るよ。でも、心配な子がいるから」
先生は椅子に座った。
「わた、し?」
「うん」とうなずいた先生は、「マドレーヌ、食べた?」と尋ねる。