暗くなるころに、ふたりの訪問者があった。
「莉子、お父さんとお母さんだよ」
「……うん」
父も母から話しを聞いたのだろう。
心なしか目が赤く腫れている。
私はこれから、ずっとこうやって名乗ってもらわなければ、生きられないのだろうか。
「莉子、夕飯食べた?」
「うん」
本当は一口だけだ。
あとは夏未先生にもらったマドレーヌだけ。
「芽衣ちゃんと千春ちゃん、来た?」
「うん。楽しかった」
私の着替えを持ってきてくれた母に、笑顔を作ってみせる。
「よかったわ。少しずつ元気になりましょう」
母はそう言ったけど、困惑しているのかわかる。
私の着替えの出し入れを、意味もなく繰り返しているから。