「先輩、ケガは?」
「全然平気。擦過傷ってやつ。
ちょっと範囲が広かったから、こんな大げさにされてるだけだよ」
「よかった」
左手を掲げて笑ってみせる先輩は、きっと私に心配をかけまいとしてくれているのだろう。
彼が優しい人でよかった。
だけど……。
「先輩、私、ね……」
思い切って口を開き、先輩の顔がわからないことも、正直に話した。
「莉子……そんな」
唖然とした彼は、目を見開いたまま固まっている。
「だけど、治るんだろ?」
「ううん。多分……」
首を横に振りながら、歯を食いしばる。
原因がはっきりわかっていない以上、治療の施しようがない。
実際この点滴だって、不足する水分や栄養を補い、傷が化膿するのを抑える薬が入っているだけで、フェイスブラインドの治療をしているわけじゃない。