「響ちゃんになんて、わかんないよ。
和代先輩と幸せな響ちゃんになんか……」
和代先輩のことは、まったく関係ない話だ。
だけど、幸せを手にしている響ちゃんに、当たりたかった。
「莉子……」
苦しげな顔をした響ちゃんの目から、ポタリとひと粒の涙が零れる。
響、ちゃん……私のために、泣いて、くれるの?
一瞬冷静になったものの、わけのわからない怒りの念が再び私をとらえて離さない。
「帰って! もう来ないで! 響ちゃんのバカ」
響ちゃんにしてみれば、完全なとばっちりだ。
「わかった、わかったから落ち着くんだ」
「長瀬さん、どうしました?」
その時、看護師が顔を出した。
私の声が聞こえたのだろう。
「いえ。大丈夫です」
返事をしたのは響ちゃんだ。
その声で我に返った私は、脱力した。