こんなこと、響ちゃんに言ったところで、どうなるわけでもないことはわかっている。

だけど、誰かに当たらなければ、おかしくなってしまいそうだ。


「莉子……」


八つ当たりされて怒ったっていいはずなのに、響ちゃんは声を荒げることがない。
ただ優しく私の名を口にして、視線をそらさない。


「こんな……点滴なんかしたって、意味ない! もう誰のこともわからないの!」


自分の左腕に刺さっている点滴の管を引き抜こうとすると、響ちゃんが私の手をガッシリ抑える。


「ダメだ、莉子」

「響ちゃんには、わかんないよ。私の気持ちなんて」


響ちゃんは首を振って、私の手を押さえ続ける。


「もう、死んじゃいたい」

「莉子!」


響ちゃんが初めて声を荒げた。

きっと初めてだ。
私のことをそんな風に叱ったのは。