いつか退院していくのだと考えると、怖くて怖くてたまらない。
どれだけ病院が嫌いでも、誰もわからないという恐ろしい世界に投げ出されるよりは、"まし"なのかもしれない。

いつの間にか、天井をぼーっと眺めて泣いていた。


「莉子」


頭の中が不安でいっぱいで、誰かが入ってきたことにすら気が付かなかった。


誰?

清和の制服を着ている。
ネクタイにズボン……。それに背が高くて……。


「哲哉、先輩?」


私は恐る恐る聞いてみた。

するとその人は、一瞬驚いた顔をして言葉を失くす。

違う。哲哉先輩じゃない。
先輩がいつも持っていたエナメルバックは白だから。

黒のエナメルバッグは……。


「響ちゃん?」


先輩の名を口にする前に、情報を集めなかったことを後悔していた。
突然の訪問者にテンパっていたのだ。