ベッドがぎしっと深く軋んだ。順平くんがおれの寝てるベッドに腰掛けてきたみたいだった。
「部活のほうは最近どうだ?」
近くなった声に、おれは毛布にもぐったままで答える。
「変わりないよ。顧問がまったく顔出さないことも含めて」
「悪いな。陸上部のほうが忙しくてな、最近は大会が多くてさ」
「別にいいよ、困ってない」
「それはそれで寂しいじゃねえか。でもな、今年の1年にいいのが入ってさ。志藤って言って、おまえの隣のクラスのやつなんだけど」
「誰それ」
「志藤さゆき。100が専門の期待の新人だ」
そんなこと言われたって知らないよ。
あ、でも、それってもしかして。この間、昴センパイと喋ってた人かな。
前に廊下で見かけた。大きな声で昴センパイの名前を呼んでた人。おれは、呼べないのに。
「速いの? その人」
「まあな、実力じゃあすでにうちのエースだろ。ま、まださ、あいつには及ばねえが」
あいつ。そのエースってのよりも速い人。
誰、なんてもちろん訊かない。姿ははっきりと残っている。