綺麗だなあって思ったんだ。とても。
真夏くんと、そこで輝く、ニセモノだけど、小さな光。
触れてみたくなった。どうしようもなく。
そのとても綺麗なものから、目を、離せなくって。
手を伸ばしたのは無意識で、気付いたのは、右の手のひらに自分のとは違う熱い温度を感じてから。
真夏くんの目がまんまるに開く。
数秒経ってから、ようやくあたしも、おんなじ顔をした。
「うわっ! ご、ごめんなさいぃっ!!」
慌てて両手を離したけどもう遅い。
え、今あたし何した? 何した!? ……なっにしてんだあたし!
真夏くんのほっぺた……触るとか!
「つい、ほんと……ごめん!!」
やっばい、やばい。顔すっごい熱いんだけど。もうやだ恥ずかしすぎる。今すぐ消えたい、帰りたい。
離したところでもう遅いよね。真夏くんおもいっきり驚いた顔してたし。そりゃそうだよ。
「綺麗で、あの、真夏くんの顔に、スバルいて……綺麗だなって、あの、ほんとにごめんねっ……!」
ああもう引くよね、さすがに引くよね。言い訳も何言ってんのかわかんないし。
綺麗だから触るとか、どこの変態だよあたし。
ただでさえ親しくない人に触られるのって嫌なのにね、いきなり顔とか。おまけに真夏くんの。
ほんと、恐れ多くて泣けてくる。
ああ、これって、土下座してもダメなパターンのやつかなあ。
「あたし二度と、手を伸ばして触れるような距離には近づきませんから……」
「別に、いいよ。嫌じゃない。びっくりしただけ」
「だよね、そうだよね、……ん?」
え、あれ。
なんだろ、今、なんて言った?
真夏くん、こっち見てくれないけど、今あたしが思ってたのと全然違うこと言ってなかった?