示された場所は第2校舎。

1階の渡り廊下を抜けてそこへ行き、美術室の前を通り過ぎる。廊下はとても静かだった。美術室で活動中の美術部員はみんな静かに絵を描いていて、うちの美術部ってこんなに真面目なんだなあって、今日初めて知った。

しとしとと降る雨の音と、ペタペタ鳴る自分の足音だけを聞きながら、縦に長い廊下の突き当たりまで向かう。

そこにあったのは今は使われていない家庭科室と、上に繋がる階段だけ。だと、思っていたけれど。


「…………」


真夏くんからの手紙に書かれていた地図には、階段のところに印があった。

念のため、階段を見上げてみたけれど、あるのは踊り場だけでもちろんそこに人はいない。どういうことだろうともう一度手紙を見て、それからふと、階段の横のところを見てみた。

美術室と階段の間には、いつもガラス戸で閉じられた外に繋がる出入り口がある。

出入り口までのほんの数歩の通を、片方は美術室の壁、もう片方を階段の下を埋めた三角の壁で挟んでいて、その、階段の壁のところに、古ぼけた、ひとつの扉があるのを見つけた。


「まさかこれ……かな」


扉の上には表札みたいなものがある。何か字が書かれているような感じはあるけれど、掠れていて書いてある文字までは読み取れない。

ためしに錆び付いたドアノブを回してみると、以外にもそれはスムーズに開いた。