「部活行ってるみたいだなあ」


休み時間、ひとりで廊下を歩いていたらポコンと何かで頭をはたかれた。

振り返ると高良先生がいて、ひらひらと丸めた教科書を手に持ったまま手を振っている。


「先生今あたしを殴りましたね。PTAに訴えますよ」

「なめるな、世の奥さま方はみんなおれの味方だ。それよりおまえ、毎日ちゃんと部活やってんだってな。偉いじゃねえか」

「あ、そうだ! 言おうと思ってたんですよソレ、勝手に入部届け出すのやめてください!」


結局あれから1週間。

あたしは学校のある日は毎日屋上へ鍵を開けに行って、真夏くんと一緒に暗くなるまで空を眺めている。

正直、日が暮れるまでヒマでしかたないし、星空にだってそんなに興味があるわけじゃなく、そのうえ曇って綺麗に見えない日だってあるけれど。

断ることができなくて、行く理由と同じように行かない理由も見つけられなくて、あたしはこれまでと違った放課後をしばらくの間過ごしていた。


なんら、特別なことはないけれど。

……ううん、少しだけ、あるとするならば。

学校一の有名人である「宮野真夏」と、他の誰も知らない時間を過ごしているということ。


「誰にも内緒」っていう約束を、真夏くんはきちんと守ってくれている。

もう勝手に教室に来たりしないし、廊下でたまたますれ違っても、話しかけてきたりしないし。

その代わり、ふたりきりの屋上では真夏くんはいろんなことをしゃべってくれる。星のこととか(これがほとんどだけど)学校の授業のこととか、お兄さんのこととか、ほんと、いろいろ。