たくさんの祝福を貰った。そしてこれからのエールも。
1年生でインターハイ優勝。その反響はあたしが思ったよりもずっと大きくて、校内でも至る所で声を掛けられたし、噂されもした。
「おめでとう、うちのエーススプリンター」
いくつその言葉を貰っただろう。それを受け止めるには少し戸惑いもあったし、照れもしたけれど、あたしを応援してくれる声は素直に嬉しくて、心がむずむずした。
それに自分自身、あのインターハイ決勝での100の感覚はどうしたって忘れられなかった。
今までで一番広がった世界。あんなにも眩しかった、輝いていた。
もし、あれよりももっと広がったら、一体どうなるんだろう。もしももっと速く走れたら。それって、きっと。
あの真夏のレースは、あたしの世界をさらに広げる大切なきっかけになるものだった。
もっと走りたいよ。もっと速くなりたいよ。
その思いがどんどん強くなっていく。大きな夢、そこに辿り着くために。
あたしはもっと、速く走れるようになりたかった。
でも、それは、インターハイのすぐあと。
夏から秋に変わり始めた、涼しい風が吹くようになった頃だ。
あたしは左膝を壊した。
インターハイ直後からわずかな違和感は感じていたんだ。でも、走りたいっていう思いがどうしても強くて、その違和感を無視して走り続けたのが原因だった。