今日の集合場所は学校の屋上だった。

集まるところ、大抵はここなんだけど、ときどき真夏くんは気分で場所を変えてくるから結構困る。

この間の丘とか、なら、まだましなんだけど。たまに駅の向こうのもみじ山の展望台とか、隣町の河川敷とか、そんなところも平気で指定してくるから、あたしはメールを見るたび毎回どきどきしっぱなしだ。

それでも付き合って行くんだもん。あたしも大概ばかだなって、自分でちゃんと、わかってるけど。



夏休みだけど学校は賑やかだ。部活とか補習とかで、いつだってどこかに人がいる。

昇降口へ行くにはグラウンドの脇を通っていかなきゃいけない。練習中の野球部がキインと飛ばした白球を見上げながら、あたしはゆっくりそこを歩いていた。

今日もいい天気だ。雲なんてひとつもないし、透き通ってて、空がこんなにも濃い色をしている。

これが夜まで続くといいな。だって真夏くんはまた喜んでいると思うから。これだけ晴れているんだもん、きっと星がよく見えるって。


「篠崎」


ふいに呼ばれて振り返った。ジャージ姿の高良先生が、あたしを見つけてひらひらと手を振っていた。


「こんにちは先生」

「はい、こんにちは。今から部活か?」

「そうです、今日は屋上に集合で」

「そっか、仲良くやってるみたいで安心だよ。真夏もなんか、最近楽しそうだしな」


それは、なんか、返答に困るけど。

あたしがもごもごするのを見てか、高良先生が楽しげに笑う。


「ま、あいつのことよろしくな。おまえが飽きるまでは一緒にいてやって」


ぽんと頭に乗る手。あたしじゃなくて真夏くんが飽きるまでじゃないの、とは寂しくなるから言わなかったけど。

そう言えば、今さら思うんだけど。高良先生って真夏くんと仲良しなんだから、真夏くんが部活に余計な人を入れたくないのきっと知ってたはずなのに、なんであたしを入れたのかな。

あたしに部活させたいから? でもそれなら他の何でも、よかった気がするのにさ。