でも、ここまでやってきたのはいいけど、どのタイミングでどうやって声をかけたらいいのでしょうか。
当たり前だけど、先輩は部活中なわけだし、他の部員とかにも変なふうに思われちゃうかもしれないし。
どうしよう……。
「ねぇ、かえで!見て見て!先輩かっこいいよ!」
ぐるぐると考えていると、隣から菜々がそう言って先輩を指差した。
5対5の試合形式の練習中だった。
内村先輩は同じチームの人にパスをもらうと、そのまま華麗なドリブルさばきで相手ゴールまで突き進む。
そして、最後は勢いよくダンクを決めた。
嬉しそうに笑いながらハイタッチを交わすその姿は、何度か試合の応援に行った時に目にしたことがあるけど。
改めて見ると、フラれたあとだというのに、やっぱりかっこいいなぁ好きだなぁと思ってしまう。
「内村くん!お疲れ様!」
ぼんやりと先輩を眺めていると、彼に駆け寄る女子生徒がひとり。
確かあの人は、男子バスケ部のマネージャーの……。
「梨花」
マネージャー、の……。
紺野梨花(こんの りか)先輩……。
「はい、タオル」と、無邪気な笑顔の梨花先輩に、内村先輩も「サンキュー」と笑いながらそれを受け取る。
「さっきのシュートすごい良かったよ!今日は絶好調だね」
「まあな。梨花のアドバイスのおかげかもな」
“梨花”……。