翌朝。
昨日の夜に作ったカップケーキを手にした私は、学校に来て真っ先に柊先輩の教室へ向かった。


「柊先輩!おはようございます!」


先輩はすぐに私に気付いてくれて、いつもの爽やかな笑顔を浮かべながら廊下に出てきた。


「おはよう、かえでちゃん。テストどうだった?」


「はい!柊先輩のおかげで、赤点回避どころか高得点取っちゃいました!」


「おー!すごいじゃん!おめでとう。俺も役に立てたみたいで嬉しいよ」


キラキラの笑顔で自分のことのように喜んでくれる先輩は、やっぱりどこをどう見ても素敵男子にしか見えない。好きだなぁと改めて思う。


「それでその、お礼にカップケーキ作ったのでよかったら食べてください」


「え?この間も貰ったばっかなのに、いいの?」


「もちろんです!ほんとに、先輩のおかげですから……」


「そんなことないと思うけど、ありがとう。大事に食べるね」


恥ずかしくて顔は下を向いてしまったけど、なんとか両手でカップケーキを差し出す。
そのあと両手の重みがなくなり、受け取ってもらえたんだと理解した次の瞬間、私の頭に大きな手のひらが乗せられた。



「よく頑張りました」



優しく2、3度頭を撫でられたあと、先輩の温かい手は離れていった。


「柊先輩……」


「じゃあ、またね」


顔を真っ赤にして惚けている私に手を振って、柊先輩は教室に戻っていった。


「……」


先輩に撫でられた頭にそっと手を当ててみる。
まだ温もりが残っているような気がした。


ほっぺにキスとか、さすがにそんな妄想通りではなかったけど。



きっと、勉強頑張ったご褒美だって、思ってもいいよね……?