突然の菜々の提案に、一瞬私の思考が停止する。
「ええっ!? そんなの無理だよ!! 私の頭の悪さに呆れられちゃうよ!!」
ほんっとーに、数学に関しては冗談抜きで笑えないぐらいできないんだよ私は!
そんなことを柊先輩に知られたら、もう恥ずかしすぎて生きていけなくなる……!
「でも、二人きりの教室で仲良く勉強なんてなかなか良い雰囲気になれるんじゃない?」
「それはそうだけど……」
しばらく悩んで、ふたりで勉強をする姿を想像してみた。
放課後。二人きりの教室。
ここがわからないんです、って言ったら、じゃあ教えてあげるね、って先輩が教科書片手に私のノートを覗き込む。
練習問題がきちんと解けたから、先輩が、やれば出来るんじゃん、って笑って褒めてくれっちゃったりして……。
そんで良い感じになって……。
『かえでちゃん、今度のテスト頑張ったらご褒美あげるよ』
『ご褒美……?』
『うん。かえでちゃんにおでこにキスか、ほっぺにキス、どっちがいいか決めといて』
なーんて耳元で囁かれたりなんかしちゃったりしてー!!
「きゃーっ!菜々、私やっぱり先輩に教えてもらうわ!」
「かえで。あんた、片想いだってこと忘れて、すごい都合のいい妄想をしたでしょ」
さすが菜々、よくわかっていらっしゃる。
とにかく、そうと決まれば、放課後柊先輩のところへ直撃だーっ!