体育館に着くと、すぐにバスケ部の主将が私に気づき、柊先輩の居場所を教えてくれた。


どうやら、バスケットボールの空気を入れるために、体育館の中の方の体育倉庫にいるらしい。


「柊先輩、こんにちはー」


倉庫の扉は開いていたので、ひょこっと顔だけ覗かせてみる。
すると、柊先輩は私を見て目を丸くした。


「かえでちゃん……!? 何で……」


「私も手伝っていいですか?」


柊先輩の言葉を遮るように言って、私も倉庫の中へと入る。
跳び箱やらマットやらが置かれた倉庫は思ってた以上に狭くて、先輩を知覚に感じてドキドキしてしまう。


でも、平常心だよ、かえで。


「じゃ、じゃあ、かえでちゃんも一緒に空気入れてもらえるかな。これ使って」


バスケットボールの小さな穴に、渡された器具を差し込み、ポンプを押すと、シューッと空気が入っていく音が聞こえた。


シューッ、シューッ。


会話はない。音だけが、狭い倉庫に響く。


「柊先輩」


空気を入れる手を止めて、私は先輩に向き直る。柊先輩も手を止めて、私の言葉に耳を傾けてくれた。



「この前、もう関わるなみたいなふうに言われましたけど、それは無理です。だって私、先輩のこと大好きですから」