にこっと笑ってお礼を言うと、柊先輩は苦笑して。


「お礼言われるほどのことじゃないよ」


少し照れくさそうに頭をかいた。


その姿が、いつものかっこいい先輩じゃなくて少年みたいに可愛くて、私は今すぐにでも大好きですと言って抱きつきたいぐらいの衝動に駆られる。


そんなことをしたらもちろんドン引きされてしまうので、なんとか自分を抑えこみましたが。


「これ、家でゆっくり食べたいから持って帰っていい？」


「はい！もちろんです！」


ありがとう、そう言って先輩は私があげたクッキーをバッグにしまうと、「じゃあ部活だから」と素敵な笑顔を残して体育館へと向かった。


その後ろ姿が見えなくなるまで、さっきの先輩の笑顔を思い浮かべながら見送る私。
しばらくして、陰から見守っていてくれた菜々が声をかけてきた。


「よかったね、かえで。受け取ってもらえて」


「うんっ！頑張って作ってよかったー！」


緊張したーとため息をつくと、菜々がよしよしと頭を撫でてくれた。


見た目は少しいびつかもしれないけど、食べられないほどのものじゃないし、きっと美味しいと思う。


何はともあれ、あの時のお礼ができて本当によかった……。