……なんて、一瞬で終わってたまるかあぁ!!



「じゃあ、俺はこれで……」


「嫌ですっ!」


「え?」


私は、そのまま去って行こうとする先輩を呼び止めた。


こんな、こんな一瞬でフラれて、私の大事な初恋が泡のごとく終わってしまうなんて、絶対に嫌だ。


「私、本気なんです! 本気で先輩のことが好きなんです!」


「えっ……そんなこと言われても。俺、君のこと知らないし……」


それはっ、確かにそうだけどっ。


内村先輩を好きになったのは高校1年生の時で、しばらくは陰から先輩を見るだけで充分だった。
だけど、このまま先輩が卒業しちゃうのをただただ待つのは嫌だと思った。


後悔すると思ったの。


だから、今日思いきって一歩を踏み出した。


そんな簡単に引いてたまるもんですか!


「知らないからというなら、これから仲良くなって私のことを知ってもらいます!だから、保留とかにしてもらえませんか!?」


大好きなんです、内村先輩のことが。



「……ごめん。俺、好きな人がいるんだ」



好きな……人……。


そうか、そうだよね。
私が先輩を好きなのと同じで、先輩にだって好きな人ぐらいいるよね。


「そうですか……わかりました……」


ありがとうございました、と力ない声で返して、私はその場をあとにした。