「諦めてたら、多分……私は戻ってませんでした。先輩の想いがあって、私の想いがあったから、今があるんです」


気持ちを込めて伝えると、水樹先輩はほんの少し笑みを浮かべた。


「そうか……そうだね。そして、君がひとつひとつを変えてくれたからだ」

「ひとつひとつ?」

「真奈ちゃんのおかげで、生徒会のみんなは少しずつ前に進んでる」

「そんなっ、私はそんなたいしたことしてないです」


みんなが前に進んでるのは私の力じゃない。


赤名君が笑ってるのも、彼が勇気を出して立ち向かったからだし、三重野先輩が会長からもらったストラップを最近になって携帯につけるようになったのも、彼女が決断したことだ。


それに、子猫たちも救えなかったし……という言葉は呑み込んだ。

ヤキソバたちのことは、私の心を今でもチクチクと痛ませる。

悲しくてやれきれない気持ちは、少しは落ち着いたように感じてるけど、消えないで残ったまま。

私でそうなら、水樹先輩はもっと辛いだろう。

そう思うと言えなかった。