それから、中庭の掲示板にも新聞を貼り終わると、水樹先輩はちょっと付き合ってと言って、私を裏庭に誘った。
9月も半ばに入り、真夏よりは多少和らいだとはいえ、空気はまだ少し夏の熱気を含んでいる。
照りつける太陽から逃げるように木陰に入った私は、青空を背負った屋上を見上げた。
壊れたフェンスはすでに撤去され、今はそこだけ何もない状態だ。
多分、屋上に上がれば落下防止の対策はあるんだろうけど、ここからは何も見えない。
水樹先輩は芝生の上に立ち、その何もない部分を眩しそうに見ていた。
以前ここに来た時の、ぼんやりとした屋上を見つめていた水樹先輩の姿とは重ならない。
ふと、先輩が「一番最初の夏はね」と懐かしむように話し始めたかと思えば。
「真奈ちゃんが俺に告白してくれたんだ」
「えっ!?」
動揺せずにはいられない言葉を発した。
だけど、水樹先輩はそんな私に構わずに続ける。