私は、拳を強く握り締め、勇気を振り絞り唇を開いた。


「理解……したいんです」


触れられたくないなら、触れないでおこうと思ったりもした。

無理に触れて、踏み込んで、嫌われるのも怖かったから。

だけどもう、このままじゃ嫌で。

このままじゃ、いけない気もしてて。


「全部わかりたいなんて、ワガママなことは言わない。だから、聞かせてくれませんか? 先輩が私と関わりたくない理由を」


懇願するも、水樹先輩は黙ったまま。

やがて、遠くの空で雷鳴が轟くのが聞こえてきた。

頭上の空は暗く、奮い立たせた気持ちまでも暗闇で覆われてしまいそうで。


このまま、会話もできないで時間が過ぎるのか。

不安に思った刹那、ついにパラパラと雨が降り始めた。

少し粒の大きい雨が私の頭と肩を濡らした時──


私の手が、グイッと強く水樹先輩の手に引かれた。