階段を駆け上がると、まだ落ち着いていない心臓が悲鳴をあげる。
足も力を無くしているのがわかったけど、私は気力を振り絞って階段を上った。
そして、少しフラフラしながらも最後の階段に足を乗せ、俯いてしまっていた顔を正面に戻すと──
境内、本殿脇の石段にうずくまる……
水樹先輩の姿を見つけた。
先輩が座っている場所は、夏祭りに皆でカキ氷を食べながら座っていた場所。
あの日は賑やかだったその場所に、ぼんやりと1人うずくまる水樹先輩は……とても寂しそうに見えて。
何て、声をかけようか。
戸惑いながら一歩を踏み出した時。
足音に気付いたのか、水樹先輩がゆっくりと頭をもたげた。
私の姿をその瞳に捉えた直後、水樹先輩は驚き目を丸くする。
「あ……あの……」
まだ、かける言葉が見つかっていなかった私は、それだけ発し、もう一歩先輩の方へと近づいた。