「かもね。あとは、俺だからってのもあるかも。ほら、俺は真奈ちゃんラブだから」


冗談めかして笑みを深める会長。

その姿に、心にかかっていた濃い霧が、僅かに晴れたような気がする。


「会長は人を励ますのが上手ですよね。赤名君を変えたのも会長だって聞きました。凄いです」


素直に口にすれば、会長は「そう?」と視線を私から外して陽の傾き始めた空を眺めた。

緩く吹く風に乗って、雲がゆったりと流れていく。

駅の方から、電車の到着を知らせるアナウンスがかすかに聞こえて。

それと重なるように、会長の声が耳に届く。


「それなら、そんな俺に変えた真奈ちゃんはもっと凄い人だね」


──え?

今の会長に変えたのが……


「私、ですか?」