「それなら、神隠しにあった女性の存在を玉ちゃんが忘れている可能性もありだ。それと、真奈ちゃんが見つけたメッセージも、それを匂わせてる」


言いながら、再びスマホの写真を見せ、拡大するとゆっくりとスクロールさせた。


「大切な人と書いた後に、誰か、と書かれているだろ? これは、誰だかわからずに、けれど大切な人だということは覚えていて探しているように思えないか?」

「つまり、探していた人を探し、話を聞くのが真相解明への近道なわけね」


三重野先輩がうまくまとめると、会長はにっこりと笑って。


「That's right!」


やけに発音のいい英語で"その通り"と答えた。

とにもかくにも、やっぱり聞き込みが重要ということを会長が話していた時──


「あのさ」


水樹先輩が柔らかくも強い声を発する。


「神隠しの謎に迫るのもいいけど、せっかくの夏祭りを満喫しないの?」


言われてみれば、年に一度しかない夏祭り。

ここまで話し合えたなら、神隠しの話はまた月曜日にゆっくりでもいいかもしれない。

みんなもそう思ったようで、私たちは頷き合う。


「よーし、水樹の言うとおりエンジョイタイムだ」


会長がそう言うと、私たちは静かな境内を離れ、賑やかな参道へと移動した。