「……藍君? 大丈夫?」
そっと声をかけると、藍君は小さく頷く。
「ああ……平気。でも……なんか、大事なこと忘れてる気がする」
「大事なこと?」
「……うん」
大事なのに、忘れてしまう。
思い出したいのに、思い出せない。
その何かを探しているのか、藍君の瞳は未だ、廊下に向いたまま。
そんな様子の藍君を見ていた会長は、オカルトチックになった空気の中で咳払いをひとつする。
「あー、まぁ、なんだ。その女性のことも気になるけど、とりあえずは今日の目的を果たそうか」
その言葉に水樹先輩も淡い笑みを浮かべて頷いた。
「そうだね。許可を貰ってるとはいえ、あまり長居もできないだろうし」
「よしっ。じゃあ、始めよう」
会長のスタート宣言に、私たちは頷く。
かくして、それぞれの担当場所と集合時間を決めると、神隠しの真相を探るべく出発したのだった。