何も考えずに尋ねた私が悪いのに。


「ごめん。あんまり楽しい話じゃないね」


水樹先輩が謝るから、私は大きく首を横に振った。

すると、先輩は「でも」と小さな声で言って。


「……家のこと話したのなんて、初めてだ」


子猫に視線を落としたままに零した。

それから、ツ……と、視線を私に移すと。


「君、だからかな」


"君"という部分を強調して、微笑む先輩。

そんな風に言われたら、期待……しちゃうじゃないですか。

可愛い、とか。

好き、だとか。

私だから、とか。

水樹先輩は本当に、私を翻弄するのが上手だと思う。